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「やめろ!」
叫び声とともに、律は目を覚ました。
呼吸が荒い。
夏でもないのにシャツが汗で張り付いていた。
今のは……夢……?
額の汗を拭いながら辺りを見渡す。
月明かりがカーテンの隙間から漏れ、室内の輪郭を浮かび上がる。
夢の中とは違う。
紛れもなく自分の部屋だった。
置かれている状況をようやく把握すると、律は深く息をついた。
ひんやりとした部屋の空気が火照った体を冷やす。
次第に思考が冷静さを取り戻し、律はそこで自分の手が震えていることに気がついた。
……まただ。
もう何年も前のことなのに、いまだに夢で見るあの光景。
どれだけ拒もうとも、それは消えることなく記憶の奥底に留まり、何度でも律を苦しめる。
しかし、怒りはない。
ただ途方もない悲しみだけが律を支配する。
それは呪縛であり、逃れることのできない運命だった。
俺は一体どれだけ苦しめばいい──
いつになったら俺は解放されるんだ──
何年考えたところで答えは変わらない。
救われないことくらい、もうわかっている。
律は無力でしかなかった。
だから律は行き場のない感情をどこにもぶつけることができず、一人声を押し殺して泣くしかなかった。
──誰か助けて。
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