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「はぁ……」
青く澄みわたる空の下、西園詩織は盛大なため息をついた。
視線の先には、急な上り坂と白を基調とした高校の校舎。
何度見ても憂鬱な気分にしてくれる。学生への嫌がらせとしか思えない。
詩織の通う学校は、一般的な都立高校だ。頭は至って普通だし、変に荒れているわけでもない。
中身だけなら、どこにでもあるありふれた高校だ。そう、中身だけなら。
しかしこれが立地のことになると、話は百八十度変わってくる。
何を考えたか、この平凡高校は街の頂点に位置し、目の前に立ち塞がる坂を上りきらないことには登校さえできない。
新学期が始まったばかりだというのに、登校三日目にしてやる気は下降の一途をたどっている。
高校二年にもなり、朝の重労働に慣れたものの歓迎する気はない。
はぁ。
ため息しかでてこない。
詩織はカバンから携帯を取り出してちらっとサブディスプレイを光らせる。
八時二十分。
半から始まるホームルームまであまり時間はない。
もう駄々をこねている時間もなさそうだ。
詩織は肩を落とすと、しぶしぶ登校する学生たちの群れに加わった。
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