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まるで人気料理店の行列ような学生の列は、まっすぐ校舎まで伸びていて、見慣れた顔には苦痛の色が見られる。
爽やかとはかけ離れた光景だ。
そんな重たい空気の中、談笑しながら登校する生徒もいた。
知らない顔。新入生だろうか。
よく見ると、まだ顔も話し方もどこか幼くて初々しい。
去年の今頃、自分もこうだったのかな。
今までの自分を見ているようで気恥ずかしくもあるが、同時に曖昧だった先輩としての自覚が込み上げてくる。
意外と悪くない。
詩織はやっとの思いで地獄の坂を乗りきると、その足で教室へ向かった。
この学校では、学年と階数が一致する。
詩織は二年だから教室も二階にある。
廊下の一番奥の教室に掛けられた『2―1』のプレート。中から微かに笑い声が漏れ聞こえる。
詩織は、自分の教室であることを確認してからドアを開けた。
途端に、騒音が耳を襲う。
(うるさい!)
思わず顔をしかめた。
教室が学生たちのばか騒ぎで揺れている。
自分も一緒になって話しているときには感じないが、うるさいという次元ではない。
環境法違反もいいところだ。
今日からでも生活態度改めようかな。
喧騒の中、一時的な決意を胸に詩織は窓際一番の後ろの席についた。
一息ついてカバンから教科書を取り出そうとしたとき、視界に影がかかる。
見上げると、覗きこむように茶髪の女の子が立っていた。
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