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現在、律との距離はほんの数センチ。触れそうで触れない距離。
だが、今ならこの手を伸ばすことができる。
詩織は、バッグを掛けた方の腕を律の右腕に巻きつかせる。
ピクッと律の体が固くなる。
「離れろ、暑い」
「いいじゃん、私たち付き合ってるんだから」
「人目を気にしろよ。学校のやつらも見てんだから」
詩織は、辺りを見渡す。
比較的早い時間のため登校する生徒は少ないが、もの珍しそうに詩織たちを見ていた。
「そ、そうだね」
詩織はソッと腕を離し、また数センチの関係に戻る。
やってしまった失態に、顔が熱くなる。
「ヒューヒューっ! 朝から見せつけてくれちゃって!」
突然の冷やかし。次いで、腰に加わる小さな衝撃。
詩織は慌てて背後を見た。
目線よりさらに下。
仔犬のように目を輝かした真由が、上目遣いで詩織を見ていた。
「なになに? 二人はとうとうそんな関係になっちゃったわけ?」
「あ、あんた、いつの間に!」
振りほどこうと腰を振るが、真由の両腕は詩織をキープしたまま。
答えるまで離す気はないとみた。
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