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助けを求めようと隣を見るが、律は前を平然と向いていて、自分は関係ないと主張していた。
──使えない彼氏っ!
律をキッと睨み、すぐに違う救いを探す。
するとちょうど背後を見た時、それはやって来た。
「止めろ真由」
白金色の髪をした男子生徒が真由の首根っこを捕まえる。ぐっと腕に力が込もると、真由はいとも簡単に詩織から離れていった。
「急に走り出したかと思えば、おまえは」
「離して拓也っ! いい!? これは親友としての義務なの! 詩織が健全な学校生活を送れるように──」
「単におまえが楽しみたいだけだろうが」
首根っこを捕まれた真由に、それを叱る拓也。まさにチワワとその飼い主だ。
詩織は、ホッと胸を撫で下ろす。
助かった。
「それより、親友ならもっと心配することがあるだろ。例えば明後日から始まるテストとか」
拓也の発した耳障りな単語に、詩織の動きが止まる。
「それもそうだね。三人揃って赤点トリオだもんねっ」
真由は無邪気に笑い、拓也はうるせえ、と素っ気ない返事をした。
だが、詩織はそれどころではなかった。
テスト。
この三文字が頭を駆け巡る。
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