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「ば、バカ野郎! 郁を殺す気かっ!」
「癒されてるんだから邪魔しないでぇ! それとも、拓也も抱く?」
「妹を抱けるかぁー!」
この場合の真由抱くは、抱きつくことであり、拓也の抱くは、やましいことの方である。
と、ようやく真由のテディベア状態から脱出できた郁が、真っ赤な顔をして必死に空気を吸い込む。
「はぁ、はぁ……おかえり、お兄ちゃん……」
「た、ただいま」
少し涙目だが、精一杯の笑顔を向けてくれる最愛の妹に、拓也は一種の感動すら覚えていた。
あぁ、なんて出来た妹なんだ。抱きしめてやりたい。
思わず差し出してしまう両手。受け入れ体勢は万全だ。
目を閉じてただ待つと、腰に手を回され柔らかな感触が身体中を満たしていく。
あぁ、柔らかい。郁も成長したんだな──
妹の柔らかな胸元に込み上げる感動。拓也は郁のかわいい姿を拝もうと目を開く。
そして──
「えへへ……!」
「おまえかぁー!」
──荒れた。
目下に郁の姿はなく、代わりに人間大チワワこと真由が拓也の感触をしっかり楽しんでいた。
郁にしては身体が成熟してるとは思ったが、こうくるとは。
郁はというと、拓也の横で哀れむようにため息をついていた。
少なくとも兄を見る目ではない。
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