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なんていうことだ。
何がわからないではなく、それすらわからないなんて。
先が見えない。
通常なら放っておいて勝手にさせるが、彼氏にそんな態度をとれるほど真由は冷たくない。
仕方がない。覚悟を決めよう。
真由は抱える不満をため息として落とす。
「もう拓也は~」
「バカなところがまたいいだろ?」
「戯れ言は休み休み言ってよぉ。これじゃあそのうちニートだよ?」
「ニートは今関係ないだろ。あと、そう思うならなんとかしてくれ」
なぜか威張る拓也だが、真由は真由で思わず納得してしまった。
なるほどっ、それもそうだ、と。
頭は良くても、こういうところは単純なのだ。
真由はテーブルから身を乗りだし、一から授業する気持ちで説明し始める。
だが背の小さい真由からしたらこの作業は辛いわけで、ピンと伸ばしたつま先がプルプル震えている。
だんだんと笑顔が曇っていく。
拓也はその変化を肌で感じていた。
「真由?」
「……やりづらい」
「なら、隣に来ればいいだろ」
「いいの!?」
誰もダメとは言っていない。
質問したくせに真由は返答を待たずに拓也の隣に座り、椅子を思いっきりずらして拓也にピッタリと張りつく。
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