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「なんだお金じゃないの……イヤイヤ、私は決して盗ろうなんてそんなやましい事は────」
誰もいないのに道の真ん中1人で手を振り、心の悪魔を払い除ける。
凪沙は“それ”を持ち上げた。
冷静になって観察。
「こーいうの、懐中……時計っていうんだっけ?」
大きさは5センチ程。ピカピカの金色だ。
ただ1つ、妙な外観。
──針は4本。
長い針と、短い針と、中心の窪んだ針と、中心の膨らんだ針。
1~12までの数字と、真ん中に何十本もの線。
「にしても……高級そうな時計……」
外観・質感共に、自分でも分かる。これは高級品だ。……珍しい物だ。
と。さすがにこんな物を持ち去る事はできない──いや、いかなる物であろうとも。
かと言ってこのまま放置も良くない。
仕方ない。
「えっと……この辺に交番は……っ」
凪沙は交番を目指した。
途中、その懐中時計が気になる。
あれ? 1本、針が動いてない。
しかも他の1本は動き方がおかしい……動くのに3秒?
「なーんだ、壊れているんだ」
ああ、だからあんな道の端に捨てられていたのか。
自分流に納得した凪沙は、交番へ行くスピードを落とした。
「でもなんで針が4本もあるんだろ……? 変なの。あ、もうちょっとで1周」
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