『時と時の狭間』

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時は流れる──いつまでも、変わることなく、永遠に。 この世……人間は、動物は、植物は、機械は、大地は、空は、そして──世界は。 時間の流れに沿い、逆らわず、抗うことなく動き続ける。 だが、それは本当に“本当”の時間なのか。 知られること無き、真の時間。 ────狭間の時。 ドン。 相手はたった1人。だがいかにもな厳つい顔、大きな体。 「てめぇ、ぶつかっといて一言も無しかよ」 茶色くフワリと広がる長めの髪を風に揺らすのは、先程この歩道橋の上で男とぶつかった高校生、葉崎翔哉(はざきしょうや)。 いや。正確には、ぶつかった、ではなくぶつけられた。 完全なるいちゃもんだ。 翔哉はハァ、とため息を漏らし、 「面倒っ」 と小さく呟いた。 相手の男はそれを聞き逃さず、 「はぁ!? んだこの野郎っ! っざけんじゃねーぞ!」 と怒鳴り散らした。 そんなやり取りを見た周りの人間は通ろうとしたこの歩道橋をUターンし、自分は巻き込まれまいと逃げていく。 人間そんなものだ。 皆、面倒事は嫌いだろ。 ……翔哉は心の中で呟いた。
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