『時と時の狭間』

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──午後5時48分51秒。 季節は冬に近付いており、空は早くも暗くなりつつあった。 場所は店が密集している地域の路地。 普段この道は人通りが少なく暗い為、常に不気味な雰囲気を醸し出している。 そんな中、1人。 葉崎翔哉は立っていた。 「面倒」 手には銀色の小さな懐中時計。 先程男との騒動の中、懐にて時間を確認したものだ。 時計は現在時刻を示し、至って普通に動いている。 ──57秒、58秒。 カチ、カチと時を刻む。 だがその時計は少し異様だった。 普通の時計の針が2本なのに対し、この懐中時計には長針・短針の他にさらに2本ある。 ──1本は針の真ん中辺りがくびれの様に細い“間針(かんしん)”。 ──1本は真ん中が広がっている“中針(ちゅうしん)”。 この時計には普通の1~12までの数字の他、中心に円状で小さく、合計60もの線が刻まれている。 その小さな内側の円を回るのが間針と中針だ。 とは言っても、間針の方は数字にして“12”の位置でピタリと止まり、全く動かない。 中針はしっかりと動いているが、それは1周する毎に動く間隔が変わるという不思議なもの。 “ある条件”により、針の動く時間間隔は1秒だったり、1分だったり、果ては1時間、1日だったりと様々。 ちなみに現在49分20秒。 中針は7秒間隔で動いており、50本目の線を通過した所。 円を1周するには残りの線10本×7秒であと70秒だ。
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