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スーッと刀を鞘から抜く。
その刃は月の光さえ無くなったモノクロの世界で、鋭く煌めいていた。
翔哉はスタインス・クロッカーを取り出し、針を見る。
カチッ……カチッ。
いつの間にか間針が動いていた。代わりに中針は動きを止めている。
間針が1つの線を動くのは2秒間隔。
1周で2分。
間針が示す時間はスクレアムの消滅までの時間。つまりタイムリミット。
この針も1周毎に動く間隔は変わり、今回の場合は発生から2分で消えることを意味する。
「残り……46秒」
余裕、と笑って走り出す翔哉。
「グワァアッッ!」
迎え撃つトカゲブルーファ。
正面から来た翔哉に対して体を大きく回し、自慢の太い尾を当てる。
ビュッ、とそれは尾が風を切った音ではなく。
「甘いな」
翔哉が高く飛んで尾をかわした音。
翔哉は真上を指していた刀をグルンと半回転させ、自身の落下に合わせてトカゲブルーファに刃を刺し込んだ。
「グワァァアッアアッ!」
スクレアム消滅まで残り24秒。
トカゲブルーファは……まだ耐える。
自分の上の翔哉と、刀を振り払おうと体を震わせ暴れる。
「ち、面倒だ。暴れん──な!」
刺さった刀を抜いて、もう一閃。
残り16秒、トカゲブルーファもさすがに諦めた。
息絶えたトカゲブルーファは全身、土の様に変化すると、風と共に砂となって跡形もなく消えていった。
「あと……10秒」
翔哉は急いで元いた路地に戻る。
スクレアムが消滅する際、発生した時とほぼ同じ場所(誤差2、3メートルまで)に戻るのがルールだ。
そうしないと、発生前後の食い違いにより時間に歪みが生じてしまう。
走りながら刀を鞘に納め、再び空中に線を描き、その上に刀を合わせる。
刀は先程と同じ光りに隠され、消えた。
消滅まで残り2秒。
なんとか間に合った翔哉だった。
これからはまた元の世界に戻る。
そうか、それは本当──。
翔哉はこう呟いた。
「──────面倒っ」
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