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窓から射し込む朝の光は、春の気配を含んでいた。
まだ街路には雪の残る季節だが、暖かく煌く朝陽は、春が確実に近づいていると教えてくれる。
私は朝食を終え、椅子に掛けて本を読んでいた。
うとうとし始めたとき、まるで、どこか別の世界からでも耳に届くように、孫たちの声が聞こえ、ふと顔を上げた。
「信じないねっ!そんなのいる訳ないじゃないか!嘘だよ、嘘!」
「まあ!なんて夢がないのかしら。それに私、確かに見たんだもの。」
その声は、廊下の先辺りからだろうか、何やら言い争っているらしく聞こえる。
私は部屋のドアを開け、孫たちに声を掛けた。
「ニック。ベッキー。お前たち廊下でそんな大声を出して・・・。何を言い合っているんだね?」
「おじいちゃん。お兄ちゃんたらひどい事言うのよ。私がお化けを見たのに、嘘だって言うの!」
「馬鹿だなぁ!お化けなんている訳がないじゃないか。見間違いだって言ってるんだ。でなけりゃ嘘を吐いてるのさ。」
「嘘なんか吐いてないもの!!」
孫たちは、私を間に挟んで言い合っている。
妹のベッキーなどは、私の上着にしがみついて、青い目に涙をいっぱい溜めて、今にも泣きそうな顔つきだ。
私は手振りでニックを制し、しゃがんで、ベッキーと目の高さを合わせた。
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