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私は、レナに教わった、オークの有る町へと辿り着いた。
住人たちは、田舎町らしく、良く言えば気さくであった。
よそ者の私がいろいろと尋ねても、気持ちよく、余計な事まで話してくれる程だったが、なるほどレナの言っていた通り、話がオークや、そこから聞こえる歌の事に及ぶと、途端に口が重くなった。
それでも、小さな町のこと、オークの場所にも、難無く行き着くことが出来た。
薄っすらと積もった雪の間から、枯れ草が無粋に突き出した、お世辞にも手入れが行き届いているとは言い難い、小さな墓地と隣り合って、それは立っていた。
「なんと・・・、立派なオークだろう。」
私は、感嘆の声を発せずには居られなかった。
眼前に立つ、古く大きな樫。
幹を取り囲むには、大人の男が5人も必要だろうか。
濃い、艶の有る葉が鬱蒼と茂り、風にさざめいている様は、鉛色の冬の空と、寒々しい墓地に挟まれて、なお、生命の香りを漂わせていた。
いったい、どれだけ昔から、ここに立っているのだろう。
パットもここに来て、この樫を見たのだろうか。
いや、或いは、今もこの町に居るのでは・・・。
私は、暫くその周辺を、うろうろと回っていたが、特に変わったところも見つからない。
そこで、歌が聴こえると言う夜を待って、再びここに来ることに決め、一度町中に戻って、宿を探し、少し眠ることにした。
目を覚ますと、太陽はまだ、西の地平の上で、赤い光を放っている。
少し早いかとも思ったが、私は待ちきれず、宿を出て、オークの所へと向かった。
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