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蝋燭のオレンジの光が、ふわふわと揺らめく線のように、地面に伸び、そこでまた、静かに止まった。
しかし、返答の声は無い。
住人が出てくる気配も無い。
私は、中を確かめようと、声を掛けながら、ドアに手を伸ばし・・・、
「夜分にすみません。私は人を捜して旅をしている者です。ここに・・・」
そして、勢いよく開いた。
「!!」
いきなり開けられるとは思っていなかったのだろう、僅かに開けた隙間から、外を窺うようにしていた小屋の住人が、ドアの支えを失って、転げるように、表に跳び出して来た。
「危ない!」
私は、そのひとを腕の中に、受け止めた。
慌てて体を起こそうと、腕の中でもがくそのひと。
私の腕を掴み、顔を上げたところで、2人の目が合った。
2人の吐く白い息が、優しく混じり合い、流れてゆく。
彼女は、ブルーの目を、円く見開いて、私を見ていた。
「・・・・・・パット。」
私が名前を呼ぶと、
彼女の指先が動き、掴んでいる私の腕を、しっかりと握り直した。
しかしそれでも、その小枝のように細い指は、ずいぶんと力弱く感じられた。
腰まで届くほどだった、艶やかな金髪は、肩の高さで、ばさりと切られ、顔は青白く痩せている。
微かに赤みを残す唇が、何かを言いたそうに開いたが、言葉にならないのか、小さな背中と一緒に、ふるふると、小刻みに震えるだけだった。
「パット。・・・私だよ。アルだ。アルバート・ウィンドールだ。」
パットは震えをこらえるように、唇をきゅっと結び、私の腕の中で、何度も何度も、小さくうなずく。
その目からは、ぽろぽろと、大粒の涙がこぼれ落ちた。
私は、彼女の痩せ細った肩を、そっと抱き締めた。
「迎えに来たよ。パット。」
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