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オークの側まで来ると、天使の姿が浮かび上がって、見えてきた。
そのまま近付いていくと、白く美しく、ぼうっと光る大きな翼に照らされたその姿は、なにやら、オークに向かって、祈っているか、話し掛けているようにも見えた。
「あの・・・。」
私は、恐る恐る、話しかけた。
少女は、翼越しにこちらを振り返り、目を丸くして驚いて見せたあと、にっこりと笑った。
『チリチリ』と軽やかな鈴の音がした。
「起こしてしまいましたね。ごめんなさい。なかなか歌をやめなくって。」
「いいえ。また会えて良かった。あなたには、お礼を言わなければなりませんでした。
あなたが、彼女の歌を歌ってくださったおかげで、私たちはこうして再会することが出来たのですから。
本当に感謝しています。ありがとうございました。」
「良かったですね。愛おしい方と、お逢いになれて。」
少女は、黄金色の瞳をくりくりと動かし、微笑みながら返事をした。
「でも、あの歌は、私が歌っていたのではありませんよ。私はただ、連れに来ただけですから。」
「え?では、誰が歌っていたのです?
連れに来たって、いったい誰を?
あなたは・・・、何者なんですか?」
「そう言えば、何もお話していませんでしたね。
こちらの事が気になっていたもので、失礼しました。
先ずは自己紹介から・・・、私は、ベル・リーデンド。案内人です。」
ベル・・・リーデンド・・・。
その名前を聞いたとき、私の心に、黒雲のように不安が広がった。
案内人・・・?
連れに・・・来ただって!?
次の瞬間、私は、電気にでもはじかれたようなスピードで、懐から拳銃を取り出し、目の前の少女に、突き付けた。
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