《歌えない鳥》

5/8
前へ
/39ページ
次へ
オークの側まで来ると、天使の姿が浮かび上がって、見えてきた。 そのまま近付いていくと、白く美しく、ぼうっと光る大きな翼に照らされたその姿は、なにやら、オークに向かって、祈っているか、話し掛けているようにも見えた。 「あの・・・。」 私は、恐る恐る、話しかけた。 少女は、翼越しにこちらを振り返り、目を丸くして驚いて見せたあと、にっこりと笑った。 『チリチリ』と軽やかな鈴の音がした。 「起こしてしまいましたね。ごめんなさい。なかなか歌をやめなくって。」 「いいえ。また会えて良かった。あなたには、お礼を言わなければなりませんでした。 あなたが、彼女の歌を歌ってくださったおかげで、私たちはこうして再会することが出来たのですから。 本当に感謝しています。ありがとうございました。」 「良かったですね。愛おしい方と、お逢いになれて。」 少女は、黄金色の瞳をくりくりと動かし、微笑みながら返事をした。 「でも、あの歌は、私が歌っていたのではありませんよ。私はただ、連れに来ただけですから。」 「え?では、誰が歌っていたのです? 連れに来たって、いったい誰を? あなたは・・・、何者なんですか?」 「そう言えば、何もお話していませんでしたね。 こちらの事が気になっていたもので、失礼しました。 先ずは自己紹介から・・・、私は、ベル・リーデンド。案内人です。」 ベル・・・リーデンド・・・。 その名前を聞いたとき、私の心に、黒雲のように不安が広がった。 案内人・・・? 連れに・・・来ただって!? 次の瞬間、私は、電気にでもはじかれたようなスピードで、懐から拳銃を取り出し、目の前の少女に、突き付けた。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加