満月の夜に、少女2人。

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「どうした?私を殺すんじゃないのか?」   キョトンとしたままの吸血鬼に訊ねる。   「…貴女、死にたいの?」   吸血鬼は私の目を見つめる。 彼女の目は全てを見透かすよう目をしている。   「私にはもう、お前にあらがうような力なんか無い」   何となく目を反らし、紅い月の浮かぶ星空を眺める。 いつの間にか雲は晴れ、上空には怪しくも美しい夜空が浮かんでいる。   「…私は自分の力がどこまで通じるのか、ただそれだけを知る為に戦い続けてきた。しかし、それも今日分かった。私より強いお前に出会い、お前に殺される。それならば、本望だ」   「ふーん。成る程ね。 それなら、覚悟はいいのね」   吸血鬼は怪しげに笑い、立ち上がる。   「ああ、もういいんだ」   「最後に、貴女の名前わ聞いておこうかしら」   私は美しい夜空を瞼に焼き付け、そっと目を閉じる。   「…十六夜 咲夜」   ぽつりと言う。 私は、ここで死ぬのだ。   「そう。…さようなら、咲夜」   吸血鬼の鋭い手が私の胸を貫く…。  
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