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(なんだかんだ言っていたけど、今思えばあれもただのお嬢様の我が儘だったのよね…)
咲夜は満月の夜空を見上げながらあの日の事を思い出し、そんな事を思った。
実際の所、レミリアが咲夜を自らの従者にしたのは2つの理由からだった。
まず1つはその能力だ。
時を操る事ができるのならば、その分こなす仕事の量も多いと踏んだのだ。
事実、レミリアの読み通りに咲夜はとても優秀な従者となった。
初めは要領も悪く仕事もなかなか捗らなかったが、今となっては紅魔館になくてはならない存在となっている。
そして、もう1つの理由はただ単に咲夜の事が気に入ったからだ。
どういった理由からかは咲夜自身聞かされていなかったが、何故かと咲夜が訊ねるとレミリアは決まって「気に入ったから」と答えた。
つまりは、結局はレミリアの自分勝手な我が儘なのだった。
しかしそんなレミリアの我が儘に、咲夜は感謝していた。
あの日2人が出会っていなければ、咲夜は今でもより強い相手を求め、ただただ戦いを繰り返すだけの殺伐とした人生を送っていただろう。
いや、もしかしたら既にこの世にはいなかったかもしれない。
それが今の咲夜はどうだろう。
レミリアに遣える事を誇りに思い、楽しいとも感じている。
もちろん、従えるようになって日の浅いころはレミリアに対し反発もし、不満をもらすこともあった。
しかし、彼女が反発するたび、逆らうたびにレミリアは時には力で、時には説き伏せることで咲夜を自分の従者に育て上げた。
長い時間を共にする中で、咲夜はレミリアの多くを見てきた。
カリスマ性に溢れるレミリア。
我が儘なレミリア。
妹を思うレミリア。
友を慕うレミリア。
どんな表情も咲夜にとっては愛しいと思えるもので、自分が遣えるならばこの人しかいない、そう思うようになっていった。
咲夜はこの人になら、自分の一生を捧げてもいいと考えた。
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