異変の始まり

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彼女は月明かりの照らす廊下を自室に向かい歩く。   夜更けの紅魔館はいつにも増して静かだ。 (普段から騒がしいことなど滅多にないのだが…)   それでも廊下に響くのは彼女の足音だけだ。   彼女は明日の朝食について考えていた。 次の日の朝食を考えてから寝るのが彼女の日課となっていた。 掃除、洗濯はもちろん、食事の面倒までみるのが従者である彼女の仕事だからだ。   (パンに紅茶、スクランブルエッグ、ベーコンを塩胡椒で炒めて、サラダにコーンスープ…、食後にフルーツま出さないと妹様に怒られるわね)   明日の朝食を考えながら、咲夜はニコニコと楽しそうな笑顔を浮かべる。   朝がきたらまず朝食の支度をする。 そして寝坊助のお嬢様を起こして、次に妹様とパチュリー様。 皆がテーブルに揃ったら朝食を出す。   そんななんともない日常の光景を考えるだけで、彼女はその日常に幸せを感じるのだ。   と、そんな事を考えている時だ。 その症状はなんの前触れもなく訪れた。     ドクンッ     突如激しい目眩と頭痛が彼女を襲う。   「うっ…!!」   脈が急に跳ね上がるのが彼女自信にもわかる。 あまりの目眩に彼女はフラフラと壁に身をゆだね、手を胸にあて力なく廊下に座り込む。   目の前がチカチカと眩む。 一瞬、自分が何をしていたのかさえも分からなくなる。   こんな事は始めてだった。   生まれながら身体は常人よりも丈夫で、病気などした事などない彼女だ。 あまりに急な出来事に驚いたのも事実だった。  
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