異変の始まり

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    ―――――――。   ――――。   ――。     翌朝。 咲夜はいつものように、いつもの時間に自然と目が覚めた。   体調は嘘だったかのように至って健康そのものだった。   (やっぱり、ちょっと疲れてただけね)   咲夜は安堵の溜め息を吐き、朝の支度に取り掛かった。     いくらメイド妖精がたくさんいようと、彼女(?)らは宛にならない。 実質、紅魔館の家事を行っているのは咲夜のみと言っても過言ではない。 そうなれば自然と朝早くからも仕事は沢山ある。   まずは妖精達と洗濯物。 それが終われば朝食の準備。 彼女は昨晩考えていた料理を手際良く準備する。   そしてそれらが出来上がる前には主人達を起こしに向かう。 妖精達が料理の面倒を見ている間、まずは主人のレミリア、そして妹のフランドール、最後はパチュリーだ。     咲夜は主人姉妹を起こすと(寝起きの悪い2人を起こすのにはかなり手間取ったが、なんとか起こし着替えを済まさせた)最後にパチュリーを起こしに図書館へと向かう。   コンコン。   図書館の扉を叩く音が、暗く湿度の高い廊下に響き渡る。   「パチュリー様、朝食の準備が出来ました。もう起きていらっしゃいますか?」   ……。   「パチュリー様?」   返事は無い。 パチュリーは大抵、夜も眠らずに魔導書を読みふけているか、なにかしらの研究をし昼頃に眠るような生活をしている為、咲夜が来た時に寝ているのは珍しい。   「パチュリー様?失礼します」   ガチャリ。   大きく、金で装飾された木製の扉を開く。 図書館独特のカビ臭さが鼻を突く。   いつも座っている筈の彼女の机には誰も居らず、司書で彼女の助手の小悪魔すら姿が見えなかった。   「パチュリー様ー」   咲夜はキョロキョロと見渡しながらくまなく探す。 図書館はとても広い。 均等に並べられた背の高い本棚には魔導書や史書、外の世界の文献などがぎっしりと詰められ、各本棚の間の通路にはハシゴが架けられている。   「パチュリー様ー?」   列の合間を覗き込みながら図書館内を奥へ奥へと進む。   「…むきゅ~…」   「パチュリー様!?」   咲夜が一番奥の列に差し掛かろうとした時だ。 最後の列の方からパチュリーの苦しむような呻き声が聞こえた。   咲夜はパチュリーの身に何かあったのではないかと危惧した。 咄嗟に、声のする方へと駆け出した。
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