26人が本棚に入れています
本棚に追加
―――――――。
――――。
――。
翌朝。
咲夜はいつものように、いつもの時間に自然と目が覚めた。
体調は嘘だったかのように至って健康そのものだった。
(やっぱり、ちょっと疲れてただけね)
咲夜は安堵の溜め息を吐き、朝の支度に取り掛かった。
いくらメイド妖精がたくさんいようと、彼女(?)らは宛にならない。
実質、紅魔館の家事を行っているのは咲夜のみと言っても過言ではない。
そうなれば自然と朝早くからも仕事は沢山ある。
まずは妖精達と洗濯物。
それが終われば朝食の準備。
彼女は昨晩考えていた料理を手際良く準備する。
そしてそれらが出来上がる前には主人達を起こしに向かう。
妖精達が料理の面倒を見ている間、まずは主人のレミリア、そして妹のフランドール、最後はパチュリーだ。
咲夜は主人姉妹を起こすと(寝起きの悪い2人を起こすのにはかなり手間取ったが、なんとか起こし着替えを済まさせた)最後にパチュリーを起こしに図書館へと向かう。
コンコン。
図書館の扉を叩く音が、暗く湿度の高い廊下に響き渡る。
「パチュリー様、朝食の準備が出来ました。もう起きていらっしゃいますか?」
……。
「パチュリー様?」
返事は無い。
パチュリーは大抵、夜も眠らずに魔導書を読みふけているか、なにかしらの研究をし昼頃に眠るような生活をしている為、咲夜が来た時に寝ているのは珍しい。
「パチュリー様?失礼します」
ガチャリ。
大きく、金で装飾された木製の扉を開く。
図書館独特のカビ臭さが鼻を突く。
いつも座っている筈の彼女の机には誰も居らず、司書で彼女の助手の小悪魔すら姿が見えなかった。
「パチュリー様ー」
咲夜はキョロキョロと見渡しながらくまなく探す。
図書館はとても広い。
均等に並べられた背の高い本棚には魔導書や史書、外の世界の文献などがぎっしりと詰められ、各本棚の間の通路にはハシゴが架けられている。
「パチュリー様ー?」
列の合間を覗き込みながら図書館内を奥へ奥へと進む。
「…むきゅ~…」
「パチュリー様!?」
咲夜が一番奥の列に差し掛かろうとした時だ。
最後の列の方からパチュリーの苦しむような呻き声が聞こえた。
咲夜はパチュリーの身に何かあったのではないかと危惧した。
咄嗟に、声のする方へと駆け出した。
最初のコメントを投稿しよう!