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「……パチュリー様は何やら調べものがあるようで、先に食べていて、との事でした」
その時、咲夜は初めてレミリアに対し嘘をついた。
ただ、話ずらかった。
レミリアは咲夜をちらりと見る。
その表情に微笑みは無く、真剣な眼差しだ。
咲夜は目をあわせる事が出来なかった。
少し俯いたまま、じっと動けない。
「……そう。ま、いいわ。 パチェはいないけれど、4人で食事にしましょう。 咲夜、貴方も席につきなさい」
ようやくレミリアの全てを見透かすような視線から解放された。
食事に誘われたのは心から嬉しかった。
しかし、今の心境と体調のままで食事をとりたくなく、気乗りはしない。
だが主人の命令だ。
断るわけにもいかない。
「……はい。わかりました」
咲夜はレミリアの隣に座り、パンとスープだけを少しずつ食べる。
普段なら本当に楽しい食事なのだが、今の咲夜には辛いとさえ感じられた。
気乗りしない咲夜の表情をレミリアは横から見つめる。
何かがおかしい。
レミリアが感付かない訳がなかった。
「……咲夜、何かあるならちゃんと話なさい? 話さないと分からない事もあるわ」
レミリアは食事の手を止め、咲夜に向き直る。
「な、何ですかお嬢様? 私は別になんともありませんわ」
咲夜はニコリと作り笑いを向ける。
もちろんレミリアは納得いかなかった。
咲夜が作り笑いをする時などほとんどない。
その上、そんな作り笑いを浮かべる咲夜を許せなかった。
「咲夜!貴方……」
「咲夜ー。デザートデザート!」
レミリアが口を開きかけたと同時にフランドールがきゃっきゃと声をあげる。
いつもの朝食はだいたいレミリアと2人なので、久しぶりに皆で朝食をとれることが嬉しいのだろう。
いつもよりもはしゃいでいる。
「ほら、妹様。もっとお行儀よくしないと…」
美鈴もまた、どことなく様子のおかしい咲夜に気付いていた。
そのせいか、いつもよりもはしゃぐフランドールを宥めるのに一生懸命だった。
咲夜にできるだけ負担をかけない方がよいと、なんとなく彼女の勘がそう言っていたのだ。
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