ゴメンなさい。

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その声に反応し、咲夜はふと振り返る。   「お嬢様?」   「貴方は今休暇中でしょ? 仕事をする事は許さないわ」   「で、でも!…」   「私の命令が聞けないのかしら?」   フリルの付いたエプロンを着けていても、その圧倒的な迫力は変わらない。 咲夜は引き下がるを得なかった。   「わかればよろしい」   レミリアは黙り込む咲夜を見てにこりと表情を軟らげる。   「そ、それでも何故お嬢様たち自ら掃除など? そんな事、妖精たちに任せてください」   「……咲夜が、どれだけ大変なのかを知る良い機会だと思ったのよ」   レミリアは少し俯き、そう呟いた。   「貴方がここに来る前、ここにも妖精以外のメイドがいる事もあったわ。 でも、貴方ほどに優秀で心から私達に尽くしてくれるメイドはいなかった」   レミリアの表情はどこか暗かった。   「だから、せめて貴方がどんな気持ちで家事をやっているのか知りたいの。 それに、主としてメイドの仕事がどれだけのものか知っておくのも重要でしょ?」   「お嬢様…」   咲夜は安心した。 先程からずっと、自分はもう必要が無くなったと思われたのではないかと不安でいっぱいだったのだ。   しかし、それがレミリアの言葉からそうではないと分かったのが嬉しかった。     「それから…。ほら、フラン」   ずっと美鈴の後ろに隠れていたフランドールがびくりとする。   「妹様、さぁ」   「う、うん…」   美鈴が一歩下がり、フランドールが顔を出す。   「あ、あのね、咲夜…」   モジモジとモップをいじる。   「さっきはワガママ言ってゴメンなさい。咲夜を困らせてゴメンなさい」   俯いたまま、ポツリと言う。   咲夜はフランドールの前にしゃがみ込む。   「いいえ、悪いのは私です。妹様。 あのような失礼をして申し訳ありませんでした」   咲夜はフランドールに向かって頭を下げ、次にレミリアにも頭を下げた。
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