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「お願い…っ、助けて…!」 生にしがみつく人間ほど愚かなものはない。そして、そんな人間を弄ぶことほど楽しめることはない。 「う、あ…っ!」 誰だったか、命を狩るときほど辛い時はないと言っていた。俺にとって、そいつの言葉は詭弁でしかなかった。狩ることが義務なんだ。義務を楽しんで何が悪い?生にしがみつく人間の悲鳴ほど、甘美なものはない。俺にとってその叫びは、餌でしかない。 死を迎えた人間を狩ること それが俺の義務だ。義務は果たすべきものであって、嫌でも誰かがやらなければならない。誰が好んでこんなことをする?死神である俺達以外の、誰が? 「4999人目──…あと一人」 キリのいい数字が近付くと、自然と口角が上がった。懐から分厚いリストを取り出し、羅列された名前を眺める。死に近付いていく人間は腐るほどいる。急ぐことはない。終わりなどないのだから。好きな時に好きなだけ、醜い餌を貪ればいい。
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