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幸子は屋上にでると、持っていた荷物を扉に横に置いた。
そして、ゆっくりと屋上の端まで歩きフェンスごしに見える町の景色を眺めた。
いつも見ていた町並みは夕日のせいでほのかに朱色に染まっていた。
「…綺麗」
幸子はいつもと同じ町並みが夕日に染まっているのを見て、素直に美しいと感じ、しばらくその景色に見入っていた。
「…最後にこんな綺麗な景色見れてよかった」
幸子はそうつぶやいた。
「確かにな。でも、夜景の方がもっと綺麗だぜ」
後ろから声がして幸子は慌てて振り返った。
「やっぱりここか。靴はあったのに教室にいないから絶対ここだと思ったよ」
幸子はその人を見るなり、目から涙を流した。
「なっ!!何泣いてんだよ」
振り返った幸子の目の先、屋上の扉の辺りに立っていたのは、
「タケ…ちゃん…」
武司だった。
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