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ママ、可哀想なママ。
父親によく似たあたしを見る度思い出してる。
あたしの奥に愛した男を見てる。
その目が悲しみに揺らぐことに
あたし気づいている。
「…パパ?」
まだ幼かったあたし。
トイレに突っ伏して首から血を流す父親を見つけて
「イタイの?パパ。大丈夫?」
血で手を赤く染めながら背中をさすっていた。
後から帰ってきたママが叫び声をあげて
その後はすごくバタバタしていてよく覚えていないけど。
「見て、あの煙はパパよ。今ね、天国にのぼってる途中なの。ちゃんとのぼっていけるようにお祈りしようね」
炎は父親の体を包み込んで、黒い煙に変えていった。
「お祈りする。パパ、頑張ってね。」
あたしの肩に置かれたママの手が震えていたのをよく覚えている。
ママ、可哀想なママ。
あたしを見る度思い出すの
ずっとずっと
愛して、とらわれたまま
ママがそれを望んでいるのだとしても。
ママ、あたしはあたし。
あたしをそんな目で見ないで。
結局は逃げ出した。
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