デジャヴ

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「いやああああああ!」 「高橋君と松山君はみんなのものなんだからっ!」 「他の男沢山渡すから勘弁して」 「ついに結衣に、結衣が、私だけが…フリーなんていやあああああああ」 絵梨佳と他の女子達は雄叫びをあげた。 「結衣にも春が来たのか」 可奈だけが座ってしみじみとしている。 「いや、だから友達だから。ただの同級生だから。なあ?」 達久は女子をかき分けて結衣の所まで来た。 女子達の視線が痛い。 「うん」 結衣が頷くと歓声が上がった。 「良かったー!」 「そうよね。高橋君が相手にする訳無いよね」 「あーびっくりした」 「よっしゃ、フリーなのは私だけじゃない!」 「何だお似合いなのに」 可奈だけがしょんぼりしていた。 「でも、でも、でもー。高橋君も良いけど実は私、彼氏候補がいるのよね」 絵梨佳は立ち上がると髪をかき上げて、にやりと笑った。 「誰?」 絵梨佳にしては強気な発言だ。 「金髪で青い目のイケメンでーす!外国人デース」 「そういや絵梨佳、英会話習ってたもんね。その先生か」 可奈は興味なさげに言った。 「違うって!確かに英会話で知り合ったんだけど」 「ヨハン、ヴォルフガング、フレデリック、フランツ、ロベルト、ピョートルのどれ?」 「どれって、誰?!違う国の人いるじゃん!」 「バッハ、モーツァルト、ショパン、リスト、シューマン、チャイコフスキーだけど」 「可奈って、時々よく分からない発言するよね。とにかく!素敵なの。ああ、私のエリック王子!」 結衣は勢いよく立ち上がった。 「どんな人?!」 「どんな人って、イケメンだって。どうした?」 「その人に会わせて!お願い!」 結衣は絵梨佳に詰め寄った。 「いいけど…、そうだ。この前、一緒に携帯のカメラで撮ったから見る?」 「見る!」 絵梨佳は携帯を取り出し、ボタンを押した。 もしかしたら、もしかするかもしれない。 結衣は今までにないくらい緊張した。
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