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「ただいまー」
「おかえり。まだドラマ始まってないわよ」
母はリビングのソファに寝転がっていた。
「うん。ねえお母さん、私いつ病院に行くんだっけ」
「検査なら今週の金曜日だけど。何かあった?」
「何も」
「それと、お祖母ちゃんのお見舞いもしてね」
「うん」
「お祖母ちゃん、あんたの事件があって一時は危篤状態だったのに、結衣が目が覚めてからは元気になったんだから驚いたわよ。孫パワーかしらね。退院も近いわ」
「あの事件って大変だった?」
「当たり前でしょ。他の子達はどんどん目が覚めてるのに、結衣は目が覚めないんだから。余所の家族が喜んでるのを端から見るのは辛かった。中村さんの所とうちと、後何人かが全く駄目でね」
「何人かって何人?誰?」
「誰って…そこまで覚えてないわよ」
「思い出して!」
「うーん…。分かんない」
母はにっこり笑った。
「そこが重要なのに」
「何が?あ、でも結局みんな意識が戻って退院したって近藤さんが言ってたわ」
「へー。近藤さん?誰?」
「看護士さんよ」
「…………」
「あ、ドラマ始まった!キャーま・さ・る!かっこいいわあ」
母はこうなるとテレビに集中して話をしてくれない。
諦めるしかない。
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