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結局、母親から情報は殆ど聞き出せなかった。
残るは頼りになる友人だ。
昼休みにたっぷりと聞き出そうか。
「ゆ、結衣!大変大変!」
絵梨佳は結衣の前の席に着席した。
「何?」
「たか、たか!たか!」
「鷹?」
絵梨佳は口をぱくぱくしながら、何度も首を縦に振った。
「結衣、古典の教科書貸して」
「あ、うん」
結衣は古典の教科書を差し出すと、相手を見て目を丸くした。
「ど、どうしたの突然?」
「どうしたって、古典の教科書忘れたから貸りに来た」
「他に貸りに行けばいいじゃない。海斗とか、達久とか平野君とか」
「海斗は嫌みだから嫌だし、達久と平野は教科書汚いだろうから。それに貸しは作りたくない」
「汚いとは失礼だろ!俺と平のんに謝れ!」
いつの間にかいた達久は古典の教科書を持っていた。
見た目、綺麗とは言えない。
「きたねーじゃん。結衣から貸りる」
竜司は結衣から教科書を取った。
「あ、うん」
「放課後話したいから、海斗に声掛けておく」
「テニス部は?」
「お前は気にしなくていいから。じゃあな」
竜司は結衣の頭を軽く触ると教室を出て行った。
静まり返った教室。
痛く突き刺さる視線。
そして突然悲鳴のような歓声が湧き上がった。
「どういう事?」
「何で、何で?!」
「飯山さんの事を呼び捨てにしてたっ!」
「いやああああ私の竜司いいいいい!!!」
女子の群れが達久を吹き飛ばし結衣に向かってきた。
「結衣、高橋君とはどんな関係よ?」
絵梨佳は鼻息荒く結衣に向き合った。
「ただの、知り合いよね?」
「塾が一緒なんでしょ?」
「遠い親戚よね?」
「彼氏なんでしょ」
端に追いやられた可奈はぼそりと言った。
「違うって、友達だよ。ただの友達だから。それだけだから」
達久は後ろで大声をあげた。
「そ、そうなの?友達なの?」
「ただのたまたまの友達なのね」
「上辺だけの友達って訳ね」
「ただの友達が普通、頭を触るかな」
可奈はまたぼそりと言った。
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