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プロローグ:ギセイマン
それはある寒い日の夜のことだった。暗く狭い路地裏に、一人の男性が倒れていた。彼の鼻は不自然な角度に曲がり、とめどなく赤い血が流れ出している。時折痛みをこらえるうめき声を発していた。
「大人しく出せばいいんだよ」
そんな彼を二人の若者が見下ろしていた。倒れ伏す男性の半分くらいの年齢の若者。茶髪にピアスの男と、金髪に刺青の男。誰が見ても分かる。彼らは所謂「ワル」というやつだ。
二人は今しがた男性から奪い取った革の財布を覗き込んでいた。月末、大抵のサラリーマンは給料日を迎えたばかりで財布の中は暖かい。そこを狙っての行動だった。
「チ、湿気てるな」
しかしその中身を見て二人は舌打ちした。夜遅くにこんなところを歩いていた男性…少し考えれば分かることだ。男性は、つい今しがた暖かかった財布の中身を美人のお姉さんに捧げてきたばかりだったのだ。
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