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「その竹刀……貰ろたで」
ニヤリとその瞬間を狙っていたかの如く栄太郎が捨てた竹刀を取りに行く
「させるか!」
槍を巧に使うも小柄な音羽は避けて竹刀を左手に持つ
「二刀流……?」
「あの子、女の子なのに我流で二刀流使いなんだよ」
槍と二刀流の試合。そんじょそこらに二刀流使いはいない。ましてや女は尚、珍しい
「これでケリ着けようやないか」
「そうだね」
双方、構えて時機をジッと待つそれに傍観者の松陰や九一たちがヤキモキしてしまう
開いていた戸から葉が一枚二人の間を通る
と、同時に動いた
「音羽ちゃん!!」
「栄太郎!!」
音羽の胴に槍を当てて彼女の上に馬乗りになった栄太郎の胴にも竹刀が当たっている
「引き分け……ですね」
同時に動いて同時に入れたのだろう。松陰の声で安堵の声をもらす
「ん」
栄太郎は音羽の上から退けて手を差し出す。小首を傾げて手を見ていたが意味が分かり差し出された手を掴んで立ち上がる
「………おおきに」
フワリと目を細めて栄太郎に笑いかけた
(あ、可愛い……)
背が栄太郎の胸辺りで自然と上目遣いになっている
いつも自覚して上目遣いをする女たちを飽きるほど見てきた栄太郎は音羽が新鮮な感じだ
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