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栄太郎が高すぎるのもあるが如何せん音羽が低すぎた
あれほど音羽が踏ん張って取った桜の枝も背伸びせずに栄太郎は取れた
そこから桜の花を一輪だけ取り、音羽の横髪に付ける
「うーん、桃色より濃い方が……赤が似合うか――」
穢れ等を一切知らない純粋無垢の黒い瞳が栄太郎を写され、横髪から手を退ける
(なにやってんだ僕…やっぱり)
「?栄太郎~?」
栄太郎の顔の前を小さな手が左右に振られる。それだけで可愛いと栄太郎は思う
「コレおおきに!」
音羽の破顔一笑が栄太郎の胸を高鳴らせる。栄太郎が先ほど挿した一輪を気に入ったらしい
「ほな、うち帰るわ。」
「あ…うん」
パタパタと足音を鳴らして音羽の背が見えなくなる
(やっぱり僕……惚れちゃった、かな?)
右手に持った枝を見てフッと笑みを漏らす
ついさっき認めたくないと思ったのに、と自分で悪態をつくが認めてしまった気持ちは止まらない
「恋敵が出来ないように見張らなきゃね」
その願いが無残にも打ち砕かれるのは少し先のこと
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