ただいま

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懐かしい思い出の夢を見た 今に比べたら若かったあの頃の夢に青年―稔麿は目を醒ます 「音羽………」 ソッと愛しい彼女の名を舌で転がし、目を開けた 「僕の部屋……?」 目が醒めて写るは長州にある生家の自室 傍らに音羽の懐刀が転がっていた 稔麿は自ら切った場所を見たら腹部分に血は着いていても傷が見当たらない 念のために頬を抓ると痛いから夢でない。家には稔麿以外の者は誰もいないみたいだ 「……もしかして」 頭で理解する前に稔麿は駆け出した。此処が何処だか理解するにはあの場所にあの人物がいたら分かる 全力で走ったからあの場所にすぐ着いた 「はぁ……はぁ…っ…」 あの場所、松下村塾の看板を見て稔麿は戸を叩いた 「………」 が、誰も戸を開けず無人だった。諦めようとした瞬間、本宅を思い出す 「行く価値はある」 そして何処からか溢れる自信を信じて今度は走らずにユックリ歩いた 「―――栄太郎、ですか…?」 「っ!?」 稔麿を栄太郎と呼ぶ者は身内だけだった。しかし柔らかい低い声は父のものではなかった まして母でもない 稔麿は後ろを振り返る前に目がぼやける 「――栄太郎」 「せ、…んせ…!!」 心のそこから尊敬して止まない吉田 松陰がいた
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