ただいま

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「栄太郎……」 松陰がいると言うことは此処は死後の世界。つまりあの世である 松陰は複雑そうな表情【かお】をして一歩前に進む 「いくつですか?」 「……24です」 「晋作たちは生きてますか?」 「僕と、音羽だけ来ました」 話す度に稔麿の鼻の奥がツンとなる 「音羽さんもですか……」 気付けば松陰は稔麿が手を伸ばしたら届くくらいの距離にいた 「私はまだ生きていてほしかった」 「………」 「ですが来てしまったのは仕方がないですね。よく頑張りました」 クシャクシャと稔麿の髪を乱すと松陰は目を細める 「すみません先生。ですが僕は死んだ事に後悔してません」 「え?」 「此処には先生もいます。音羽と天音もいますから」 「あまね?まさか音羽さん以外に女子を?」 稔麿は違うと首を振る。松陰も稔麿が音羽以外の女に現抜かすこともないから分かってはいた(つまり稔麿をからかった) 「天音は僕と音羽の子供です」 「子を儲けたのですか?あまねとはどんな字で?」 「音羽の音を取って、天から授かったので天音と名付けました」 あまね…、天音…、覚える為に何度か松陰は呟く 「良い名前です」 子は天からの授かり物、なんて言うが松陰はまさにそうだと思う 大事な愛弟子と音羽の子供だ。きっと可愛いに決まっている 「栄太郎は音羽さんを迎えに行きますよね?」 「はい。ですが僕と一緒になるかは彼女次第です」
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