ただいま

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音羽が嫌だと言うなら稔麿は潔く身を引くつもりだ。そしてもう妻を娶らない覚悟もある 「音羽さんなら大丈夫ですよきっと」 「……だと良いのですが」 「おやおや、随分と弱気な事を。あれだけ上から目線で栄太郎様な君は何処に行ったのです?」 「僕は先生と音羽には慎重に、弱気になっちゃうんです」 立ち話もなんだからと松陰は稔麿を母屋に誘う 「あぁ旦那様、お帰りなさい」 「ただいま帰りましたお久」 母屋の前に掃き掃除をしていたおっとり美人。稔麿は目をパチクリとさせてる 「え…だれ…?」 「私の奥様です」 「………えェェェェェェエ!!!?先生の!!!?えェェェェェェエ!!!?」 失礼なんてことは頭の隅に追いやられ松陰の肩を掴んだ 「女っ気ない先生が!?あまりに女っ気なさ過ぎて男色と疑われた先生が!!?」 音羽が来る前に吉田松陰は男色の気があると噂されていた 噂には尾鰭背鰭付くもので塾生たちはあまり気にしてなかったが 「お久とは野山獄に入れられた時に会ったんですよ~」 「野山獄!?ではこの人も罪を犯したのですか!?」 「えぇ。高須久子と申します。久と呼んで下さい」 目をクルクル回す松陰にお久はクスリと笑う 「貴方が栄太郎くんね?旦那様から貴方の話しはよく聞いてたの。とても優秀な弟子って聞いたわ」 なんだかこそばゆい感じだ。松陰の肩から手を離しモゴモゴと目を誰もいない左に向ける
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