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稔麿は転がっていた懐刀を手に取り髪に当てる
「よし」
肩に着くか着かないかの髪の長さになり首辺りが涼しいのを感じながら懐紙を出して髪を包む
(まぁ少しの足しくらいだろうけど)
髪を売っただけで旅費の全額負担出来るとは考えてない
髪を売った後、どこかで仕事を探したほうが良い
(待っててよ音羽。今すぐは無理だけど絶対に迎えに行くから)
「栄太郎いますかー?」
松陰の声に反応して玄関まで走ったら松陰とお久の二人がいた
「先生、お久さんおはようございます」
「おはようございます栄太郎」
「朝早くからごめんなさいね?着るものあったかしら?無いなら旦那様の物だけど良かったら着て」
竹で編まれた四方形の箱にいっぱい入った着流しや小袖、袴、下着が入っていた
「こんなに……ありがとうございます」
「綺麗に洗ってるし解れは縫ってあるから」
つくづく完璧な女性だ。お久が松陰の妻君で良かったと心から思える
「栄太郎髪切りましたか?」
「はい。旅費の一部にしたいので。ところで先生、人を雇いたいと思っている所ありますか?」
「あるにはありますよ。反物屋ですが、縫い手はたくさん居ても配達がいないみたいです」
「そこの場所教えてください!」
反物屋に行くのはあとにして、お久が持って来てくれた握り飯を朝餉に頬張り、着ていた小袖の血を洗う
(音羽よくやってたよね。こんなめんどくさいの)
完全に血が固まって落ちづらい。それに太陽が高くなるごとに暑くなってくる
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