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「あっつー……」
吹き出る汗を拭っても拭っても少し時間が経てばまた吹き出る
「音羽お茶…っていないんだよね」
それに音羽なら言わずとも冷水を持って来てくれてた
暑さで集中力は切れ太陽が低くなってきた頃まで置いておくことにし縁側に腰を下ろす
「会いたいなぁ」
誰もいない油断で独り言がさっきから多い
音羽はどうしてるだろうか、天音はちゃんと育ってるのか、何もしなかったら考えるのはこればかりだ
勝手に稔麿が想像した男が音羽と仲良くなったのを考えただけで腹立たしい
(あぁムカつく。僕の音羽に馴れ馴れしく触るなんて)
想像から妄想へ変わる。でもよくよく考えたら彼女は何故自分といたのかと思った
(なんでだろ?顔が好みだったとかならスゴイ傷付く)
音羽がそんな女子ではないが。しかし考えても分からない。泣かせてばかりいた稔麿に何故、いたか
「会った時に聞こ……」
ウダウダ考えるのは稔麿の性に合わない。また考える前にさっさと反物屋へ足を向けた
「―――じゃあ明日からお願いします」
松陰が先に口添えしていてくれたおかげで話しはすぐに纏まり若く美青年な稔麿に4、50代の夫婦は快く受け入れてくれた
稔麿には主に接客と配達を頼みたいらしい
稔麿はそのままの足で松陰宅を訪れ昼、夕の飯を食べたあと自宅に戻る
「三国志か。東海道膝栗毛は読んだことあるけど、清の読み物は初めてだな」
松陰が面白いと進めてくれた三国志を片手に行灯に火を燈して読みはじめた
「……明日仕事じゃん」
初日から寝坊するのは嫌だ
三分の一の所で読むのをやめ布団を敷き床についた
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