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「ありがとうございました」
愛想良く働く稔麿の姿。寝坊もすることなく反物屋に行き接客に励んでいた
客足が退いた頃に昼休憩を貰いお久が握った飯と反物屋の奥さんが淹れた茶で済ます
「吉田くんは何故此処に働くんだい?」
「大事な人を迎えに行くためにです。その子を養う為にはお金が必要ですから」
「まぁまぁ。吉田くんにお嫁さんがいたんですか。もう噂になって若い女子たち騒いでますよ」
美青年が反物屋で働いている、そんな噂が昨日今日で流れていた
「いつもより若い女性がいるのはそのせいか」
「明日は忙しいでしょうね」
仲睦まじい二人に稔麿は羨ましくなった
(音羽……)
**************
【京】
「稔麿……」
京にある鍛治屋に音羽はいた
揺り篭には小さな赤子―稔麿と音羽の子 天音が寝ている
池田屋で自ら命を絶ち地獄に堕ちるかと思いきや、目覚めたらお羽と泰平が目に涙を溜めて音羽の目覚めを待っていた
二人を呼んだら力いっぱい、音羽を抱きしめた
「阿呆…!来るんはやいねん…!」
「か…あさん…すん、まへんっ…」
「音羽堪忍や。お前を残して先に逝ってしもて」
大きく暖かい泰平の手が音羽の頭を撫でる
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