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「愛次郎はんおかえりなさい。ビックリした?」
「お久しゅう佐々木さん」
驚きを隠さない愛次郎に音羽とあぐりは笑い合い彼を出迎える
「た、だいまあぐり」
愛次郎の腕の中にいるのが小桃だろうか。黒ぶちな目でこっちをジッと見ている
「音羽ちゃん。こん子が小桃や。ちぃちゃんと同じ一歳や」
「……とりあえず、音羽ちゃんいらっしゃい、かな?」
色んな意味を込めたいらっしゃいに音羽は笑う
「奏くんたち入っておいで?良いかいあぐり?」
「かまわんよ」
親子三人では十分のゆとりがあったのに音羽と育ち盛りの二人が入り少し窮屈だ
あぐりは人数分の茶を立てて茶を飲みながら昔話に花を咲かす
「ほんに、意外やったわぁ。こないに細くて可愛いのに紅蝶やったやなんて」
「副長たちが躍起になってたね。『ちくしょー!捕まらねぇ!』って。もっぱら土方副長なんだけど」
佐々木の声だと、どうも迫力やら威厳やらがないのは、彼の声が柔らかな低いとも高いとも言えない声のせいだろうか
「土方かぁ、懐かしいわ」
「土方副長は鬼だとか言われてるけど本当は気遣いが絶えない優しい人だよ」
「でも人によって噂は良くなかった」
町に出て自然と聞こえてくる噂話を彼方はよく耳を澄ましてきいていた若い女の話しと若い男の話しとは全く違っていた
女は土方に恋慕い、男は見目の良い土方を侮蔑することを言っていたらしい
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