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「死なないよー。あたしら呪う者は人の生死までは左右出来ないもん。それは死神の管轄だし」
「そ、そうか……」
死神? そんなの現実にいるのか……? と思いつつ、ひとまずは死なない、ということを聞いて安心し、俺は詰めていた息を一気に吐き出した。が、次のジュヒの言葉に、再び息を飲まされることになる。
「まぁ、呪いに耐えきれずに自ら死を選ぶ、ってことはあるかもね~♪」
「……!! 呪いって、そんなに恐ろしいものなのか?!」
お笑い番組が終わりテレビを消したジュヒは、俺に向き直るとニッコリ笑った。それを肯定と取った俺は、矢継ぎ早に次の質問をする。
「じゃあ、具体的にはどういうことが起きるんだ?!」
俺の質問に、ジュヒは顎に手をあてて少し考え込むと、困ったように答える。
「具体的には言えないけどー、何が起きてどれくらい辛い思いをするかは、あたしらの雇い主次第ってとこかなー」
「は……?」
「要はね」
ジュヒはコーヒーを持って立ち上がり、俺の隣に体育座りする。顔が結構近くなりドキドキしてしまう。こいつは俺を呪う者なのに。
「呪いって、相手に不幸をもたらす、ってことなの」
「まぁそうだろうけど……不幸って、えらく抽象的だな……」
「実際そうなんだもん。いっちゃん好きな食べ物って何?」
「え? んー……オムライスかな。てかいっちゃんて……」
「例えばさ」
俺のツッコミは無視して、ジュヒは続ける。全く、マイペースな奴だ。
「あたしがいっちゃんに、これから一生オムライスを食べられないって呪いをかけたとしたら、辛い?」
「そりゃ、まぁ」
「そう。これでいっちゃんはちょっと不幸になる。でもそんないっちゃんを見て、あたしの雇い主の楓ちゃんが『そんなんじゃ生温い!!』って言えば、あたしはいっちゃんがもっと不幸になるような呪いをかけなきゃいけないわけ。分かった?」
「あぁ、成程……ってちょっと待て!! じゃあ何か?! 俺は楓の納得がいくまで不幸が続くってのか?!」
「そういうこと☆」
愕然とした。何でもないことのようにこの少女は言うが、それって結構大変なことではないのか。俺は楓の気が済むまで幸せにはなれないだなんて――。
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