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そ、そうだ!! 俺はもう1つ聞きたかったことがあったのを思い出し、慌てて口を開く。
「で、でも! 俺が楓をフッたのはそもそも、あいつの浮気が原因なんだ! 単なる逆恨みで、なんで俺がこんな目に遭わなきゃいけない?!」
肩に掴みかかって食い下がる俺を欝陶しそうに退けるジュヒ。でも……やっぱり納得がいかないのだ、自分が呪われるだなんて。
「あのねー、呪う者は裁判官じゃないんだよ? どっちに非があるかなんて、あたしらには関係ないの」
「そんな……!! あ、でも『人を呪わば穴二つ』とかいう言葉もあるじゃないか!!」
「へぇ、そんな古い言葉よく知ってるねー。まぁ確かに昔はそういうのもあったけど、今は呪い業界にも下請制度が広まってね。あんまりなくなっちゃったんだよね」
「業界ってなんだ!! 下請ってなんだ!!!」
するとジュヒは近くにあったチラシとボールペンを取り、一つ咳払いをして声を張った。
「よぉーく分かる、呪う者講座ー!! ドンドンパフパフー♪ はいっ、拍手!」
「おい!! ふざけてんの……か……」
詰め寄ろうとする俺の目の前に、素早くボールペンが突き出される。妖しく煌めく鋭利なペン先の後ろでニコニコと笑顔を浮かべるジュヒ。その顔にはデカデカと「文句ある?」と書かれていた。俺は首をもげそうな程高速で横に振る。ジュヒはそれを見て満足そうに頷くと、俺に突き付けていたボールペンを下ろしてチラシの裏に何やら描き始めた。
「いっちゃんは、邪神といえば何を思い浮かべる?」
「邪神……貧乏神とか、疫病神とか、死神とか?」
「そう。特に有名なのはその辺よね。実はその仲間として、そんなに有名じゃないんだけど、呪神(のろいがみ)って呪いの神様も、この世にはいるんだよ」
そう言うと、ジュヒは紙に描いた棒人間の顔の部分に「呪神」と書き込んだ。
「その昔、呪神信仰の文化は、主に貧しい農村部で興ったの。貧しい人達は、重い年貢を納めさせる庄屋や貧乏そのものを憎んだりした。そんな中で、呪神信仰は広まっていったのね」
ジュヒはそこまで言うと、呪神の周りに5つ程丸を描き、その下にめんどくさかったのか、全部平仮名で「まずしいひとたち」と書いた。子供かよ……とツッコもうかと思ったが、怖いのでやめておく。
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