呪われました。

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「ねぇねぇ、秋元先輩の話、聞いた?」 「あぁ、楓先輩と別れちゃったんでしょ?」 「そうそう! しかも楓先輩の浮気が原因なんだって」 「あー、分かるかも。楓先輩モテるもんね」 「男友達も多いしね」 「でもさー、それって案外、男友達っていうかセフレだったんじゃない?」 「それあるかもー!」 「でももったいないよね、秋元先輩イケメンなのに」 「じゃああんた、次秋元先輩狙いなさいよー!」 「やだよー! 楓先輩と姉妹になっちゃうじゃん!」  ゲラゲラと廊下にまで響く笑い声に、俺は溜息をつく。久しぶりにサークルに顔を出そうと部室へとやってくれば、この通り。俺と楓が別れたという話は即広まったらしい。後輩の女子数名のえげつない噂話に苦笑いしながら、俺は部室に入れるタイミングを窺っていた。  オールラウンドスポーツサークル・「SPORTS LOVERS」通称スポラバは、週2~3回集まって様々なスポーツを楽しむサークルだ。その内容はバスケやフットサルを始め、おにごっこやかくれんぼに至るまで、多岐に渡る。  2日前にサークルのメーリングリストで「今度の集合日はボウリングやります!」と3年生で現部長の水谷から連絡が来て、ボウリングなんて久しくやってないな、と思って参加しようと来たのだが……この調子ではどうにも参加しづらい。 「でもさー、秋元先輩どうするんだろうね。楓先輩とは嫌でもサークルで顔合わすじゃん」 「だよねー」  その通り。俺と楓の出会いだって、このサークルを通じてなのだから。  俺は部室に入るのを諦めると携帯を開き、水谷に「悪い、今日やっぱ参加しない」とメールを送る。すぐに返事が来て、そこには「了解です! 楓先輩からの参加連絡がまだなんですけど、先輩知りません?」と書かれていた。そうか、こいつはまだ知らないのか。そう思いながら、俺はそのメールに返事をすることなく、サークル棟を出た。
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