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楓と別れて早1週間。フッたのは俺なのに、あれからずっと罪悪感に苛まれている。彼女の言い分を全く聞かなかったのはよくなかったのではないか、とか、もう少し言い方ってものがあったんじゃないか、とか。そういう気持ちをピンを薙ぎ倒すことで晴らそうと思っていたのだが……この分だと後輩達から質問責めに遭って、更に精神的に追い詰められそうだ。
(失恋は男の方が引きずるっていうけど、ホントだな……)
はぁぁぁ……と深い溜息をつき学校を後にしようとした俺は、その背後から
「見ーつけたっ♪」
とはしゃぐような女の子の声を聞いた気がして振り返る。だがそこには誰もおらず、いたのはいかつい柔道部の連中ぐらいだった。すぐ傍で声がしたように思ったのに……。疲れてるんだろうな。そう自分に言い聞かせ、俺は家路についた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ふざけんなよなぁマジであの女ぁ~!! こっちは大事にしてやってたのによぉ~浮気なんてしやがって……」
ヒック、としゃくり上げて缶ビールに口を付けるが、生憎それは既に空になっていて、俺は舌打ちしてのっそりと立ち上がると冷蔵庫に向かう。そして今日5本目の缶ビールに手を伸ばした。ここのところ毎日こんな感じだ。
「結構……、好きだったのによぉ……」
怒り上戸タイムが終わると、今度は泣き上戸タイムへと突入する。これもいつものこと。
「あぁ~ちくしょぉ~!! あいつイイ女だったよなぁ~!! ヤりてぇ~!!」
本人には到底見せられないていたらくだ。楓とは2年ちょっと付き合っていたが、俺はかっこつけて、自分からがっついて求めたことなんて1度もない。
そんなこと言ったって、俺だって健全な男子である。ヤりたいもんはヤりたい。彼女の前ではかっこつけていても、今は完全フリーの身。
(ハハ、今なら完全に自分好みの女の子がいたら即お持ち帰りしてるな……)
半ば洒落にならないことを考えながら冷えたビールを飲んでいると、突然――
ピンポーン
部屋のベルが鳴った。やべ、結構酔って喚いてたからなぁ、お隣りさんか誰かが注意しに来たのか? そう思い静かにする。が――
ピンポンピンポーン
呼出しベルは鳴り止まない。あーあーすみませんでした! もううるさくしないから帰ってくれよー、もう0時過ぎてるぞ?
――0時?
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