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俺はぼんやりと眺めていただけの時計を改めてよく見る。やっぱり、時計の針は今が0時過ぎであることを示していた。
(こんな時間にうちに来る奴なんて――楓以外に有り得ない。あいつ前から終電なくしただのなんだのって、よく夜遅くにうちに押しかけてきてたし――)
ドキドキしながら、なんとなく忍び足でドアへと近付く。心臓の鼓動が速まっているのは期待しているからなのか、なんなのかも分からずに。俺が無駄に時間をかけてドアへと近寄って行く間にも、呼出しベルは鳴り続ける。7度目のベルが鳴った瞬間、俺は意を決して、ドアを勢いよく開け放った。するとそこには――
「――?!?!?!」
「あ、やっと開けてくれたー☆ もー、あたし待ちくたびれちゃったよー」
楓ではなかった。というか、知り合いでもない……が!!
なんて破壊力のある美少女なんだ……!!!
サラサラストレートロングの黒髪。白い肌。顔なんかびっくりする程小さい。瞳はパッチリだし睫毛は長いし、頬と唇はほんのりピンクに染まっている。化粧っけは全然ないのに、こんなにナチュラルに可愛い子は初めて見た。首も腕も腰も足も細いのに、胸はしっかりその存在を主張している。服は黒を基調としたシックなものだったが、それが妙に似合っていた。突然の好み直球どストライクな美少女の登場に、俺の体内のアルコール成分は全部吹き飛んだ。
「初めまして♪ 私は貴方を呪う者、呪妃(じゅひ)ちゃんでーす☆」
「付き合ってくれ!!!」
「はぁっ?!」
彼女の手を取り、俺は思わずいきなり告白する。相手は明らかに戸惑っていたが、俺は構わず続けた。
「ジュヒちゃんかぁ、名前まで可愛いなぁ!! 俺の好きな韓国映画の主人公の名前と一緒だ!! しかも俺を呪いにきてくれただなんて!! もう俺、一万年と二千年前から君に呪われるのを待ってたんだよ!!」
「あっ、そうなのー? じゃあ遠慮なく呪っちゃうよー☆」
「うん、どんどん呪っちゃってー♪ どんどん……って、え? のろ……?」
こんな美少女には似合わない不穏な言葉に、俺はふと我に返り、おずおずと彼女の顔を見る。彼女はニコニコと明るく微笑んでいるが……さっきの言葉は聞き間違いだったのだろうか……。
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