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説明する気があるところを見ると、ドアを開けた瞬間に俺を呪い殺す――といった危険性はなさそうだ。それでもやはり自分を呪うなどと言っている輩を部屋に上げるのは気が引けて躊躇していると、彼女はドアを叩くのをやめ、しおらしく言った。
「ちゃんと説明するってばぁ、ねぇ……入れてよぉ……」
ねぇ……入れてよぉ……
ねぇ……いれてよぉ……
ねぇ……挿れてよぉ……
「ねぇってばー……っ?!?!」
「任せろジュヒ!! 俺がお前を満足させてやるーっっっ!!!」
「きゃあぁぁぁぁぁっ!!!」
――暗転。
「お待たせいたしましたジュヒ様、コーヒーでございます」
「ん、ありがと☆」
数分後、俺の部屋には黒ずくめの美少女の姿があった。そして俺の左目には大きな青痣。ドアを開けるなり飢えた獣の如くガバッと抱き着こうとした俺に、この可憐な少女は強烈な右ストレートをお見舞いしたのだ。そして今、俺は罰として完全に彼女の下僕と化している。実を言うと、これはこれで少し楽しいのだが。
件のお嬢様はといえば、ベッドサイドにゆったり腰掛け、お笑い番組を見てはキャッキャと喜んでいる。その無邪気な笑顔も本当に可愛くて、思わず抱きしめてそのままベッドに押し倒したくなるのだが――さっきの唸るような鉄拳を思い出し、俺は身震いをする。
俺はすっかりくつろぎモードに入っているジュヒの足元に正座して、おずおずと彼女の顔色を窺う。そろそろ本題に入りたいのだが……彼女は本当にその「呪い」とやらについて話す気はあるのだろうか……。
「あのー……ジュヒ様? そろそろ……『呪い』について説明していただきたいんですけれども……」
「あぁ、そうだったねー。ってかその『ジュヒ様』っての、もういいよー。飽きたから。で? 何から話せばいい?」
あ、そ……。半ば脱力しながらも、説明はしてくれるようなので、俺は足は崩すが何となく居住まいを正す。ジュヒは相変わらずリラックスモードだが、俺はまず1番重要なことから聞くことにした。
「じゃあまず1つ目……俺は――死ぬ、のか?」
息を殺して、俺はジュヒの様子をじっと窺う。それに反比例して、ジュヒは相変わらずお笑い番組を見て笑いながら、あっけらかんと答えた。
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