プロローグ

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   千葉市花見川区幕張。  幕張メッセやマリンスタジアムなど、有名な施設と共にビルの建ち並ぶ近代都市である。  モーターショー等のイベントを行う幕張メッセの存在で、県外の人間であってもその地名を知る人はいるだろう。  そんな施設や近代ビルが建ち並ぶ以前から、幕張の地で営業しているラブホテルに一組の男女がいる。  場所柄、男女は着衣を身に付けていなかった。  女の顔の赤らみから、事の後のようだ。 「どうして、今日に限ってこんな古臭いラブホにしたの?」 「さあな……」  男は古びたベッドの上で、煙草に火をつけ口にくわえている。  ただ、それを吸う訳でなく立ち登る煙を無気力な目で見詰めていた。  女は、それをつまらなそうな目で一瞥すると、床に散らばった服の中から下着を取り出し身に付ける。 「まぁ、私としたらいつもの一流ホテルに飽きてたし、気分転換にはなったかな」 「ここは……」 「えっ、なに?」  男は、それ以上語るのを一瞬だけ躊躇った。  
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