第四章 30年の怨み

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   酒出は、ソファーから立ち上がりゆったりと歩き、パーテーションの外で大きく背伸びをした。  全員が、それを目で追う。 「そうだなぁ、北さん。人を従わせるのに一番簡単な方法は何だ?」 「そりゃ、脅しだろ」 「まあな、だが脅しに屈しない人間もいる。その場合は、どうする」 「まぁ、次は金だな」 「警部補。金銭の動きは、婦人達から峰山社長にですよ。愛人達へは、ここでは分かりませんが……」 「そうじゃねぇ。嫁さん達の、口座の収支報告書をよく見てみな」  婦人達から、峰山社長に金が振り込まれる前日、名前はバラバラだが100万円の振り込みが、婦人達の口座に成されている。  女性名義でATMからの振り込みが、50万円を2回で100万円の振り込み。  それを認識させると、酒出は峰山に向き直る。 「これ、愛人からか?」 「さぁ、どうかしら」  それまで酒出の迫力に負け、自供しかけていた峰山だった。だが、警察は証拠が揃っておらず、まだ事件の全容を掴んでないと気付き態度を一変した。
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