第四章 30年の怨み

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   十数分前の峰山に戻り、酒出の視線を正面から受け止めている。 「そんなもの、調べれば分かる事だぞ」 「えぇ、どうぞお調べ下さい」  強気の峰山の理由が、酒出には分からなかった。  警察がここまで介入し、愛人達との関係を自供したなら、遅かれ早かれ狂言誘拐の首謀者が、峰山自身だという事実は明らかになる。  どうあっても、逮捕は免れないだろう。 「何だ、何があるってんだ」 「警部補……」  心配そうな目で、酒出を見詰める松本の視線も届かないくらい、酒出の頭はフル回転している。  例のポーズの指の弾き方も、普段では見せない力強さだった。 「酒出。俺達は銀行の防犯カメラの映像を検証し、事実関係の裏付けを取ってくる」 「あぁ、頼む……」  既に銀行から映像を押収してるなら、銀行が閉店していても、それをするのは可能だろう。  北方がそう言ったのだから、映像の押収は完了している筈。 「刑事さん、そろそろよろしいですか?」 「いや、まだだ」
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