第四章 30年の怨み

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   今の状況で、峰山においそれと帰宅させる訳には行かない。  当然、任意同行をかけ署で話しを聞きたいところ。  すぐ令状も出るだろうから、ここや峰山の自宅も家宅捜索が行われる。  ますます、峰山の強気の理由が分からない。 「菊乃ちゃん、署に連絡して峰山を……」 「はい。峰山社長、これより署にてお話しを伺います。まぁ、一応任意ですが」  場合によっては、逮捕と言う形にしても良かった。  だが愛人達との関係や狂言誘拐の首謀者など、事実関係の裏付けがこれからの為、松本も一応の任意同行と言ったのだ。  酒出は、ここに残りたそうなので、松本が気を効かして千葉北署に連絡を取った。  間も無くして、署から車輛が到着した。 「刑事さん、頑張って考えて下さいね」  峰山は鼻で笑うような仕草をしながら、酒出に置き土産の言葉を残した。  酒出は余計に考え込み、眉間のシワは更に深くなる。 「酒出さん……」  峰山が去った部屋に、酒出、酒口、松本の3人だけが残った。 「30年前……」
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