第四章 30年の怨み

56/60
前へ
/317ページ
次へ
         4    千葉北警察署の取調室で、峰山 真貴は黙秘権を行使した。  酒出が聞き出した事実は、北方から署に報告され県警へと連絡が行っている。  4人の資産家婦人が誘拐され、それが犯人グループの一人の良心の呵責から、解放されたという認識が一日にして突き崩された。  今回の事件が狂言誘拐で、4組の夫婦を引き合わせた結婚相談所の社長が、それらを手引きした首謀者だとは、県警内の誰も想像しなかったであろう。  取り敢えず銀行の防犯カメラの映像解析が、目下最優先とされる裏付け捜査だった。  そして、県警のお偉いさんに電話が入る。  酒出からの、情報差し止めの解除の電話であった。  夜間ではあったが緊急で記者会見が開かれ、狂言誘拐の事実が発表になった。  首謀者の存在も発表になったが、名前の方は現段階では伏せられた。 「しかし、狂言とはな……」 「流石に、酒出警部補の捜査だな。県警全体が騙されてる中、一人惑わされなかったな」  刑事課内では、そんな会話がなされている。
/317ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1862人が本棚に入れています
本棚に追加