第四章 30年の怨み

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   一方、4人の婦人達は狂言誘拐の記者発表前に、各所轄署に移送された。  発表前に、移送したのは移送時の安全を考えた為。  マスコミが押し寄せている状態で、病院から婦人達を出すのは危険と判断したからだ。  千葉北署は、峰山と西口婦人の2名の取り調べとなり、北方と矢次の両刑事があたった。  それは、対極的な取り調べとなる。 「相談所にクレームを言った時、あの社長はいつもの事だとばかりに、旦那に仕返しをしないかと持ち掛けられました」 「仕返しを?」 「浮気相手を社長が用意するから、その女性を通じ、主人からお金を巻き上げないかと……」 「それが、どうして狂言誘拐になんかに」  11月の初め頃に峰山社長から呼び出しがかかり、千葉駅の結婚相談所に行くと、狂言誘拐の話しを持ち掛けられた。  愛人を通し、毎月50万円もの自由になる金が入っていたが、旦那が浮気している事はどうしても許せなくなっている。 「社長の言葉は、催眠術のように私の心を動かしました」  それは、悪魔の囁きだった。
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