第四章 30年の怨み

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   別れさせ屋という商売。  相手の浮気相手になり、その証拠を離婚調停の際に提出す、こちらの要求を完全に受け入れさせるという、熟年離婚を望む主婦が使う手らしい。  峰山はそれを、より確実にするには、「狂言誘拐を仕掛けるしかないと」、西口婦人に言ってきたのだ。 「旦那と離婚したかったのか」 「狂言誘拐の前後の行動を見て、離婚しようかと思ってました」 「それで、たまたまカルチャースクールの友人と、旅行の計画があると峰山社長に話しましたら、その日に実行しようと言われました」  旅行の話しをしたら、西口はその頃に商談が入っているから、行ってこいと快く了承したという。  だが、西口が商談するという事は、運転手の星野と不倫をするという事。 「それで、離婚を決意したんだな」 「はい……」  北方の取り調べに対し、西口 由貴子は素直に供述した。  一方、矢次の方は難航していた。 「そもそも、何で狂言誘拐の手引きなんてしようと思った?」 「…………」  峰山は、右手首から先だけ振って沈黙する。
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